ケニアの大草原を旅する
エワソンギロ川流域のケニア山北部に位置するサンブル国立保護区。この地域のゾウは Save the Elephants によって 20 年以上に渡って調査が続けられています。サンブルの地形を知り、そこで暮らす人々や野生生物について理解を深めましょう。
ゾウを知り、保護する
確認されたゾウの個体数
1,450
野外観察の記録件数
20,655
GPS での追跡時間
845,000
このゾウは「スパイス」一家の「ピリピリ」です。スワヒリ語で「唐辛子」という意味です。「ロイヤルズ(王族)」など、ゾウ一家の名前にはそれぞれテーマがあり、家族のメンバーにもそのテーマにちなんだ名前が付けられています(エリザベス、ヘンリー、ノアなど)。赤ちゃんゾウには、母親と誕生年に基づく数値コードが割り振られます。「ピリピリ」の後ろに見えるのは、コード M63.9410 の 5 才の子ゾウです。探索する
サンブルのゾウの家族に会いに行く
ゾウは家族の絆が非常に強く、家族単位で助け合いながら生活しています。Save the Elephants は、これまでにサンブルで 70 以上のゾウの家族を特定し、観察してきました。活動の様子を見せてもらいましょう。
ケニアのゾウを保護する
近年、アフリカでは密猟が横行しており、2010~2012 年に 10 万頭以上のゾウの命が奪われました。こうした状況を改善しようと、個人や組織で結成された団体がゾウの保護にあたっています。アフリカゾウの未来を守る取り組みをご覧ください。
首輪
首輪
Save the Elephants(STE)は GPS 付きの首輪を使って野生のゾウを追跡しています。ゾウを観察することにより、移動パターンを知り、行動の変化を把握し、ゾウたの安全を確保できます。これまでに STE は、アフリカ全土で合計 266 頭のゾウに首輪を付けました。
観察
観察
ゾウの観察は地上や空から行われ、GPS も使われます。調査員たちは何時間もかけてゾウの習性や生態を詳細に記録。一方でレワ野生生物保護区などでは、GPS の首輪を付けたゾウのデータを Google Earth に表示して、ゾウの行方をほぼリアルタイムで追跡します。
パトロール
パトロール
ゾウの将来を賭けて、アフリカ全土で地上戦が行われています。サンブルでは、訓練したブラッドハウンドを使い、茂みに逃げ込んだ密猟者を追跡しています。ケニア野生動物公社、サンプル国立保護区の森林警備隊員、ノーザン レンジランズ トラストの自然環境保護団体が力を合わせて密猟者と戦っています。この取り組みが功を奏し、2014 年には新たに産まれたゾウの数が死んだゾウの数を上回りました。6 年前に密猟が深刻化して以来、初めてのことです。今でも、アフリカの至る所で戦いが続いています。
リハビリ
リハビリ
デビッド シェルドリック野生動物信託基金では、絶滅の危機に瀕しているアフリカの野生動物を保護するため、ナイロビの孤児救済プロジェクトを通じて、負傷したゾウや孤児となったゾウを保護して野生に返すための訓練を行っています。幼いゾウは飼育員が 24 時間つきっきりで世話をしています。こうした献身的な飼育を通じてゾウたちは社会性を身に着け、野生で生き抜く力を蓄えていきます。
計画
計画
サンブルのゾウたちは、細長いコリドー(回廊地帯)を通って地区から地区へと移動します。しかし、コリドーを通る際には人間や車に遭遇してしまう危険性があります。そこで マウント ケニア トラストは、Save the Elephants が収集した GPS データを基にコリドーの土地を確保し、ゾウたちが高速道路の下を安全に移動できるよう下道の建設に資金を提供しています。
サンブル国立保護区はケニア北部の保護地域であり、首都ナイロビから車で 6 時間。この保護区は、川沿いの森林地帯から乾燥したサバンナ地帯、岩だらけの山岳地帯にまで広がっています。南部の境界を流れるエワソンギロ川は、この地域の人々、植物、動物にとって大切な水源です。
高温で乾燥したサバンナ地帯、岩だらけの地形、川岸を特徴とするサンブルにはさまざまな野生生物が生息しています。1 年を通じて最も暑いのは 2 月と 3 月で、その後に雨季が 2 回やってきます。乾燥した砂漠にヤシの木立が点在し、遠くには Koitogor と Ololokwe の山々が見えます。
サンブルでは、ゾウの他にヒョウ、ライオン、キリンなどの動物や 450 種類以上の鳥を見ることができます。この地域の固有種であるグレビー シマウマは、細い縞模様と丸くて大きな耳、大柄な体格が特徴です。野生動物を眺めるゲームドライブでは、ソマリダチョウ、ナイルワニ、オリックスの群れに出会えるかもしれません。いずれも、砂漠に順応し、このような高温の環境を好む動物たちです。探索する
サンブルは、ゾウの研究が世界でも特に進んでいる地域として知られています。20 年に及ぶ研究のおかげで、この地のゾウたちは人を警戒しません。Save the Elephants のトラックを見ると、すぐ近くまで寄ってきます。ゾウは空間記憶が非常に優れた動物です。サンブル保護区の境界も理解しており、この保護された環境ではとても落ち着いた行動を見せています。探索する
サンブルの環境を維持するうえで、ゾウは重要な役割を担っています。木になった果物を食べ、その種子を糞として出すことで、種子の散布に一役買っています。さらに、木の皮をはぎ、茂みを踏みならすlこt、再生を促すと同時に種が育つ環境を整えます。干ばつのときは水が出る穴を掘り、他の動物たちにも分け与えます。この地にとって、ゾウはなくてはならない存在なのです。
1993 年に設立された Save the Elephants(STE)は、ゾウの未来を守り、ゾウの生息地の生態系を健全に維持する取り組みに全力を注いでいます。ナイロビを拠点とする STE は、ゾウの生態を理解して保護するため、アフリカ全土で活動しています。主な活動場所であるサンブルでは、地上や空中からゾウを観察すると共に、GPS を使ってゾウの行動を追跡しています。常に研究者という立場から計画を立て、方針を決定し、人間とゾウとの関係改善に努めています。探索する
1960 年代に生物学者であるイアン ダグラス ハミルトンがタンザニアで初めて野生のゾウの生態調査を実施し、軽飛行機を使ってゾウを追跡し、個体数を調べました。1993 年に Save the Elephants を設立した彼は、その後ほどなくして、他では見られない人に慣れたサンブルのゾウたちを、長期に渡る新たなゾウ研究の対象に選びました。サンブルで行われたこの調査によって、脅威にさらされているゾウの現状に世界中で関心が高まり、ゾウの未来を確保するためのさまざまな対策が考案されています。
航空調査に加え、Save the Elephants は GPS 付き首輪を使った行動観察も行っています。ゾウを鎮静剤で落ち着かせた後、ゾウの位置を追跡するための首輪を装着します。GPS データによって、ゾウたちがサンブル内をどのように移動しているかがわかり、特定のゾウの生活を追跡することもできます。また、ゾウが移動しなくなったとき、自動的に警告を受け取ることもできます。現在、STE は、アフリカ全土で 266 頭のゾウに首輪を付けています。
GPS 付き首輪をゾウに装着し、大量のデータを収集したら、次はそれを視覚化しなければなりません。2006 年、Save the Elephants は、首輪から収集したデータと機能豊富な Google Earth のデジタル画像を連携。ゾウの動きをより正確に追跡できるようになりました。現在では、Google Earth エンジンの処理能力を利用し、266 頭のゾウから 17 年間にわたって収集した 500 万件以上の位置データを分析しています。
ゾウの群れが移動する際、道路、家屋、農場、人などに遭遇します。ゾウを保護するうえで、人間とゾウの対立は深刻な問題です。ゾウを確実に保護する 1 つの方法が安全な移動ルートの確保です。ゾウの追跡データを基に建設されたこの下道は、交通量の多い高速道路の下をゾウが安全に移動できるように造られました。探索する
アフリカゾウにとって、密猟は最も深刻な脅威です。高値で取り引きされる象牙を目的に、多くのゾウが殺されています。年長ゾウの殺害は家族構成に打撃を与え、幼い多くのゾウがみなしごになります。密猟と戦うには、密猟者に厳しい処罰を課すだけでなく、象牙製品に対する消費者の需要も減らさなければなりません。
ゾウの死は、サンブルの人々にとって文化的損失です。象牙を求めてサンブル内をうろつく違法な密猟者たちは、ゾウと共に生きている人々の生活を脅かします。ノーザン レンジランズ トラストは地域の人々に環境保護を呼びかけ、観光事業に経済機会を見出すと共に、サンブルにとってゾウがいかに大切かを訴えようと提案しています。
警備隊員はケニアのゾウを守るため、命がけで密猟者と戦っています。現地の人々や組織から連絡が入ると、訓練を受けた犬と共に現地をくまなく捜索して違法行為を見つけ出します。レワ野生生物保護区とケニア野生動物公社は、ケニア北部で密猟の犠牲になるゾウの数を全体の 1% 未満にまで減らすことに成功し、賞を受賞。ゾウの保護という壮絶な戦いで大きな勝利を収めました。
ゾウが密猟の犠牲になると、その子どもはどうなるでしょうか。1977 年に設立されたデビッド シェルドリック野生動物信託基金は、みなしごゾウをはじめ、さまざまな動物たちを支援しています。ナイロビにあるゾウの孤児院では、飼育係がゾウたちにミルクを与え、群れの中で生活できるように訓練します。野生に戻って生活していける健全なゾウを育てるには、こうした世話が欠かせません。シェルドリック信託基金で育てられた子ゾウの数は 180 頭以上に上っています。探索する
2012 年、STE の依頼を受けてストリートビュー トレッカーが初めてサンブルに入り、野生のゾウを 360° パノラマで撮影しました。実際にサンブルを訪れるのは難しくても、オンライン サファリならゾウたちに会うことができます。こうしてゾウの様子をオンラインで紹介することで、ゾウと人々の結び付きが深まり、ゾウの未来を確保する活動への関心が高まることが期待されています。
サンブルのゾウを保護する
サンブルは人とゾウの共通の故郷であり、この 20 年間、この地は Save the Elephants の本拠地となっています。ゾウの追跡にデータを取り入れることで、保護活動が大きく変わりました。
イアン ダグラス ハミルトンからの
メッセージ
私がこの「不思議な世界」に足を踏み入れたのは、50 年前、マニヤーラ湖(タンザニア)に住むゾウの研究を始めたときです。以来、この大きな動物と、彼らが住むすばらしい環境に私の人生を捧げることとなりました。深い森林、広大な平原、曲がりくねった川、湖、火山、低木地帯から砂漠、空にそびえる山へとつながる荒涼とした溶岩などが見られます。
サンブルはこうした環境の中にあります。私にとっては、故郷ともいえる大切な場所です。私の愛する土地をストリートビューで紹介できるのは大変に喜ばしいことです。世界中どこからでもデジタルの旅に出て、ゾウたちの生活の場を探索ができます。Google マップや Google Earth を通じてサンプルを訪ねることで、ゾウの現状をもっと知っていただき、何らかの行動につなげていただければ幸いです。
ゾウやその他多くの野生動物は皆様の助けを必要としています。私たちは輝かしい自然を残していかなければなりません。サンブルのゾウたちをオンラインで紹介しています。サンブルのゾウに「会い」、その美しい生息地をご覧ください。ゾウの保護活動の緊急性がおわかりいただけるでしょう。自然界の「住人」を理解しなければ、彼らがこの地球で生き延び、繁殖するのを手助けすることはできません。アフリカのゾウを守るため、一緒に戦いましょう。
- イアン ダグラス ハミルトン博士、CBE
Save the Elephants 設立者
2015 年 9 月 15 日
Save the Elephants での日々
STE は航空調査や GPS 付き首輪も導入してお、世界でも有数のゾウ調査保護団体の 1 つです。ゾウの保護と明るい未来に尽力している科学者や支援者のグループをご紹介します。
詳細
Save the Elephants
は、ゾウの未来を守り、ゾウの生息地における生態系の健全性を維持し、ゾウの知性やその生息環境の多様性に喜びを見出し、人間とゾウとのより良い関係を築くことを使命としています。
savetheelephants.org
ケニアとその自然に対する一家族の情熱から生まれたデビッド シェルドリック野生動物信託基金は、今日、最も成功しているみなしごゾウ救済施設であり、世界有数のリハビリ プログラムです。東アフリカの野生動物とその生息地を保護する草分け的な団体でもあります。sheldrickwildlifetrust.org
レワ野生生物保護区は、地域保全に努めているモデルとしてユネスコ世界遺産に登録されています。また、国際自然保護連合でも成功している保護地区と認められています。レワは、ケニア北部における野生生物保護、持続可能な開発、責任ある観光の中心地です。 lewa.org
サンブル地域には人類最古の時代から人が住んでおり、サンブル政府は、人、動物、地理的環境の繁栄に努めています。経済、インフラ教育、野生生物の保護を中心とするプロジェクトを立ち上げ、アクセス性と安全性の向上に取り組んでいます。samburu.go.ke
KWS
は、絶滅の危機に瀕している地球上の動物や自然を保護しています。主な仕事は、ケニアの野生動物とその生息地を持続的に保護、管理し、繁殖させることです。さらに、自然保護の関係者と協力してさまざまな公共利用を実現しています。
kws.go.ke
Google Earth Outreach は、世界中の非営利および公益団体の支援に特化したプログラムです。Google Earth と Google マップを活用して各団体の重要な活動の内容を紹介し、支援しています。Earth Outreach プロジェクトは、環境、文化の保存、人道的活動を中心としています。google.com/earth/outreach